新落語・王子の狐 そのあと

・・・さすが東国三十三か国稲荷の頭領さま王子稲荷に住まう狐はそこらの野狐とはちがうやね。・・・
作・王子の小太郎

春はさくら、秋紅葉、

日本には、四季ってえものがございますから、口にいただくものは季節季節 にいろいろございますなあ。

昔から、餡(あん)と、米と、もち米から作ったものはボタ餅ともお萩とも呼ばれます。

春のお彼岸は、牡丹のお花に見立てまして、ボテっと丸みのある牡丹餅がつくられました。

秋のお彼岸は、秋の七草の萩の赤紫の花に見立てて小ぶりで長めに丸いお萩がつくられました。

どちらも同じ食べ物の別名なんでございますなあ。

春の牡丹餅は年越しして固くなった小豆の皮を取り除いて使いますものですから、こしあんができます。

秋のお萩の方はってーと、とれたての小豆が使えますので柔らかい皮ごと つぶして使うので、つぶあんができます。

ま、庶民にとりましては、お萩ってーとどうも上品に聞こえてしまいます。

そこいくと、牡丹餅、いや、ボタ餅って名には野暮ったさがとても 庶民に心地いいもんですから、どちらもボタ餅でとおすことが多ござんす。

狐をだました男がおわびに狐に持っていった手土産は、王子稲荷さんから1町ほど のところにありました三本杉というボタ餅屋のボタ餅でございました。

手土産のボタ餅を持って狐の穴をのぞきこんで、出てきた子狐から 母ちゃん狐が伏せって起きられないと聞かされて、

「おじちゃん、悪いことしちまったねえ、 お詫びだよ、このお土産、お母さんに渡してね」

「アイ」って言って子狐が母親のところへ「かあちゃん、これ、お詫びのボタ餅だってよ」

「え、あーッ、そんなもん、食べるんじゃないよ、ウマの糞かもしれない」

と、ここまでが前回までのお話でした。

「でもかあちゃん、いい匂いだよ、たべたいよお」

「およし、およしよ、いけない子だねえ」

するとそばにいた他の五匹の子狐たちがみんなで「たべるー」「たべるー」「おいしそー」 「そうだ」「そうだ」と大合唱。

「静かに!静かに!、ご近所の穴に聞こえるだろ、
先日はおまえたちが取組み合いして騒いでいたからお隣さんから ご主人がお昼寝できないから静かにしてちょーだいって苦情来ただろ、
狐火当番で隣のご主人、今月一杯は夜中に歩かなきゃいけないんだからさあ、昼間寝とかないと大変なんだよ夜中のお仕事は、
王子の名物狐火はみんなで守らなきゃいけないっていつも教えてるだろ、
あたしたち狐が元気で狐火つけてると人間はなんだかとーても喜ぶんだ、
ホラ、ここの王子お稲荷さまにもあたしたちの姿が石で 作られて、あたしたち狐を大事にしてくれてねえ、
お前たちの大好きな油揚げ、 人間は喜んだ分、油揚げをたーくさんくれるんだ。
ありがたいだろオ。」

「だから父ちゃんたち大人は夜中に頑張ってんのかあ。」

「そうだよ、お前たちも大人になったらそういう大事なお仕事一杯するんだよ。忘れんじゃないよッ。」

って、この母ちゃんだいぶ教育熱心で。

「わかったかい、静かにおしよ、
んじゃ、かあちゃんが ほんのすこし食べてみるからね」
っと言ってちょっぴり指先に餡付けて口に。

・・・恐る恐る食べてみたが、これがまたうまい味で。

「あれ、本物だ」

「ワー、ぼくも」「あたいも」ってんで、 またたくまに食べつくしました。

そりゃそうでしょう。

王子の三本杉のボタ餅といやあ、 扇屋のたまご焼きか、
石鍋のくずもちか、
三本杉のボタ餅か、
と言われたほどの 土産物でしてな、


王子の南、駒込という所に、 今、名庭園と親しまれている六義園がございます。ここは元は大和郡山のご隠居のお殿様がお住まいでございましたが、このお殿様が わざわざ三本杉までボタ餅買わせにお使い立てたってーほどの評判のボタ餅でございました。

「本物もってきてくれたんだねえ、あの人間。根は悪くなかったんだねえ。
罪を憎んで狐を憎まず、っていうからねえ。
いや、あっちは人間だけどさあ、
きっと人間の言葉にも、罪を憎んで人を憎まず、ってことばがあるよ」

って、なんだかわかりませんが。

「お前たち、このボタ餅の包みをくわえてね、さっきのおじさんの匂いをたどって 行って、ごちそうさま、って言っといでな」

「あいあい」と言うや、六匹の子狐たちが、男のところにやってきた。

ごそ、ごそ、・・ごそ、ごそ、
「あれ、何の音かな、廊下の障子に、ありゃ、シッポの影だよ」
障子をソーっと開けておどろいた、いつのまに廊下に上がって子狐たちが ボタ餅の包みにたわむれている。
親しい者のところに来たかのように 安心しきったように逃げもしない。

うまいボタ餅をくれたおじさんの所と余程心を許しているようで。

食い物の効果はテキメンでございます。

「えー! ハハーン、子狐たちを使いにたてて、食べましたってーことを 知らせに来てくれたってわけか、おどろいたねー、こりゃ、 狐といえど、心があるんだねえ、 さすが
東国三十三か国稲荷の頭領さま王子稲荷に住まう狐はそこらの野狐とはちがうやね。 毛並がイイんだねえ。きっと高く売れ、いやいや:::感心だ、感心だねえ、」

無邪気にたわむれているかわいい子狐たちを見ているうちに この男、母狐にちょいと心が寄ってしまいましてな。

先日、扇屋で注しつ注されつしていい気分になっていた時のことが思い浮かんじまって・・

「あん時ア、うまく化けてたなあ、若いイイ女に。
ナンだなあ、思い返してみると、ときどき化けて家にきてくれるといいんだがなあ、
『あなた、お酒、もう一杯いかが』
とか言ってそばによってお酌して くれて、
『おまえさんにも、そら、注いであげましょう』
とか言って 注いであげて
互いに程よく酔い合って・・・・
ウーイ、ンモー。ンモーーー。ンモーーーー。」

「あれ、おじちゃん、牛に化けちゃった!」

「そうだ、ねえ坊やたち、帰ったらお母ちゃんに、おじちゃんが仲直りに 時々、おじちゃんちに遊びに来て下さいって言ってたよ、とつたえてね、 ほら、これ、石鍋のくずもち、お土産にもっておかえり」

そう言って子狐たちを帰しました。

数日後、子狐たちがやって来ました。

「おうおう、子狐ちゃんたち、お母さんにおじちゃんがおいで、おいで、って言った事 つたえてくれたんだろね、来てくれるってかい、来るってかい」

並んだ子狐たちが一斉に手を横に振って

「来(こ)ーん!」


作・王子の小太郎、2013.12.24
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